不動産版 第4回「地ぐらいをみる」

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今回のコラムでは、京浜東北線各駅圏域の地ぐらいをみていきます。
地ぐらいとは土地の「格」、土地の「ブランド」のようなもので数値化するのは難しいのですが、地価、所得水準と住宅の建て方・持ち方、用途地域、駅乗降者数、学校区といった切り口から、定量的な分析を試みてみます。
(1)地価からみた地ぐらいの評価
 地価情報には、公的な情報として路線価や標準地価格、基準地価格などがありますが、個別事情を反映した実際の取引価格とはズレが生じます。また、その年の1月1日時点もしくは7月1日時点の価格ですから、実際に地価情報を入手したタイミングによっては、すでに価格が変動している可能性があります。そこで、実際の土地取引事例をベースに実勢価格を推計したデータを分析に使用しています。この実勢地価データは毎月更新されていますので、リアルタイムの情報で分析することができます。

実勢地価データを駅圏域ごとに集計してみると、周辺地域から都心部に向けて地価が高くなっていますが、東京駅、有楽町駅の地価はずば抜けて高くなっていることがわかります。

◎実勢地価データに関するより詳しい情報はこちらを参照してください。
 
【駅圏域ごとの実勢地価坪単価(2005年4月)】 グラフ(1)−1


 
次に、3章で集計した新築分譲価格、中古流通価格、賃料と比較するため、それぞれの平均価格と標準偏差を算出し、価格のバラつきを標準化してグラフに表しました。その結果がグラフ(1)−2となります。これを見ると、

・都心部における地価の高さが飛びぬけてはいるものの、概ね駅圏域ごとの価格のバラつきには相関がある。
・日暮里駅や鶯谷駅、神田駅は、物件価格よりも賃料が相対的に高くなっており、収益性の高い地域と考えられる。
・新橋駅、品川駅は、地価水準に比べて物件価格や賃料が相対的に高く、設備が充実している物件が多いと考えられる。

◎新築分譲価格に関する情報はこちら
◎中古流通価格に関する情報はこちら
◎賃料に関する情報はこちら

 
【駅圏域ごとの標準化指数】 グラフ(1)−2

 

 
(2)所得水準と住宅の建て方・持ち方からみた地ぐらいの評価
 所得水準と住宅の建て方・持ち方からその地域の街の特性をある程度把握することができます。次項で行う用途地域による規制や地価水準などから、その地域に集まる世帯属性は類似してくるものと思われます。したがって、そこに住まう世帯の属性をひもとくことができれば、逆に土地のブランドが見えてくるのではないでしょうか。

ここでは、年収別世帯数の推計値を使用しています。年収別世帯数は住宅・土地統計調査と国勢調査を元に独自のロジックで推計したデータです。不動産の価格設定や需要ボリュームの把握、その他小売商店の商品構成企画など、さまざまなシーンで活用できるデータです。

 駅圏域ごとに、年収別世帯数データから住宅の持ち方別平均年収を集計してみると、都心部に近づくにしたがって、持ち家世帯と借家世帯の年収レベルの差が小さくなっていることがわかります。なお、持ち家世帯の平均年収トップは品川駅で1,083万円、借家世帯の平均年収トップは神田駅で785万円です。
◎住宅の持ち方別に所得水準がわかる年収別世帯数データはこちら
 
【駅圏域ごとの住宅持ち方別平均年収】 グラフ(2)−1


さらに、グラフ(1)−2で作成したように標準化して、物件価格や賃料、地価と比較してみる(→グラフ(2)−2)と興味深いことが見えてきます。

・御徒町駅や秋葉原駅、神田駅、田町駅、品川駅では、所得水準が地価水準を大幅に上回っており、地ぐらいの高い地域と考えられる。特に神田駅では、借家世帯の所得水準も高いので、ポテンシャルの高さがうかがえる。

・一方、東京駅や有楽町駅では、地価水準に比べて持ち家世帯の所得水準が低い。しかし、物件価格や賃料、借家世帯の所得水準は高くなっている。これは、従来この地域に住んでいる世帯と、再開発で新築されたマンションに住む新興世帯との居住ギャップを反映していると考えられる。

 
【駅圏域ごとの標準化指数(所得指数を含む)】 グラフ(2)−2

※ただし、分譲指数は2001年〜2005年に供給された全新築物件の坪単価をベースとしたもの、中古指数および賃料指数は2005年6月に流通された全中古物件もしくは全賃貸物件の坪単価をベースとしたもの、地価指数は2005年4月に取引された土地の坪単価をベースとしたもの、所得指数は1998年の住宅・土地統計調査と2000年の国勢調査から推計した年収別世帯数をベースとしたものであり、各指数の時点の違いを考慮する必要がある。
 

次に、住宅世帯の構成を持ち方・建て方別に集計してグラフに表しました(グラフはこれまでの棒グラフとは異なり、実数値ではなく構成比で作成していますのでご注意ください)。

一戸建て比率を赤系統(ピンクが一戸建て持ち家、オレンジが一戸建て借家)、共同住宅比率を青系統(青が共同住宅持ち家、水色が共同住宅借家)で表しています(※なお、共同住宅は「3階建て以上の建物に住む共同住宅世帯」で集計しています)。これを見ると、一戸建て世帯の大部分は持ち家であり、共同住宅世帯の多くは借家です。

最も一戸建て比率が高いのは神田駅であり、一方、浜松町駅、田町駅、品川駅では共同住宅の比率が高くなっています。また、浜松町駅、田町駅、品川駅では、持ち家世帯に絞ってみても共同住宅の比率の方が高い地域となっています。

◎住宅世帯が持ち方・建て方別に集計されている国勢調査はこちら

 
【駅圏域ごとの住宅世帯持ち方・建て方別構成(100%積上棒グラフ)】 グラフ(2)−3
 
(3)用途地域からみた地ぐらいの評価
 用途地域によって、その地域に建てられる建築物が制限されています。したがって、用途地域から、その地域の環境をおおよそに推し量ることができます。たとえば、第一種低層住居専用地域では、建ぺい率・容積率の制限から家と家の間隔と頭上の空間がより広くなります。そのため、閑静な住宅街が形成されやすいのです。実際、日本の高級住宅街と呼ばれる地域(成城や田園調布など)のほとんどが第一種低層住居専用地域になります。
 
◎用途地域と建ぺい率・容積率がわかる都市計画用途地域データはこちら

 このような地域特性の違いをとらえるため、駅圏域内に占める用途地域の面積割合を集計し、グラフにしたのが グラフ(3)−1 になります。これを見ると、次のようなことがわかります。
 ・御徒町駅から北部では中高層住宅系地域の割合が高くなり、鶯谷駅より北に行くと工業系地域の割合が多くを占めてくる。
 ・浜松町駅から南部においても同様に工業系地域の割合が高くなってくる。
 ・大森駅では低層住宅系地域が広がっている。
 ・都心部のほとんどは商業系地域である。


【駅圏域ごとの用途地域構成】 グラフ(3)−1

 
 また、それぞれに特徴的な地域について、用途地域を表示したマップを作成しました。作成したのは、低層住宅が広がる大森駅圏域(→マップ(3)−1)、中高層住宅が広がる赤羽駅圏域(→マップ(3)−1)、商業地域が広がる秋葉原駅圏域(→マップ(3)−3)、多様な地域が混在する品川駅圏域(→マップ(3)−4)です。
 
【大森駅周辺の用途地域】 マップ(3)−1

 
【赤羽駅周辺の用途地域】 マップ(3)−2

 
【秋葉原駅周辺の用途地域】 マップ(3)−3

 
【品川駅周辺の用途地域】 マップ(3)−4

 
(4)駅乗降者数からみた地ぐらいの評価
 1日あたりの駅乗降者数ボリュームから、その地域のにぎわい度や活力をみていきます。乗降者数とは、駅構内から外に出た人を「降車(者)」その逆を「乗車(者)」とし、「駅の改札口を通過した人数」を『乗降者数』として集計したものです。JR、私鉄、地下鉄を合計しておりますので、ターミナルとしての役割を持つ駅の乗降者数が多くなっています。

◎駅乗降者数に関するより詳しい情報はこちらを参照してください。

 
【駅別乗降者数】グラフ(4)−1



 
次に、駅別乗降者数によって駅圏域を色分けしてみました。乗降者数が多くなれば色が赤く、少なくなれば色が青くなります。一日の乗降者数が60万人以上となる上野駅、東京駅、新橋駅、品川駅で圏域が赤くなっています。

◎マップ分析には、マンション需要分析ツールもしくはマンション需給分析ツールが便利です。

 
【駅圏域内乗降者数】 図(4)−1
赤羽駅〜田端駅

 
浜松町駅〜品川駅

 
田端駅〜秋葉原駅

 
大井町駅〜大森駅

 
秋葉原駅〜浜松町駅

 
 
(5)学校区からみた地ぐらいの評価
 学校区による分析もしてみました。ファミリー向けマンションであれば、子供が通う学校がどこになるのかが物件選定の重要な要素の一つとなります。そのため、学校のレベル(学力水準や治安)が高ければ、それだけ地域のポテンシャルは高くなります。
◎学校区エリアデータに関するより詳しい情報はこちらを参照してください。

次の表は、駅圏域内に学校区が含まれる小学校を、学校区内の所得水準が高い順にソートして一覧にしたものです。これを見ると、上中里駅・田端駅の駒込小学校区、上野駅の黒門小学校区、御徒町駅の泉小学校区、秋葉原駅のお茶の水小学校区、神田駅・東京駅・有楽町駅・新橋駅の麹町小学校区、浜松町駅の赤羽小学校区、田町駅・品川駅の高輪小学校区では、区内の所得水準が1000万円を超えています。
◎住宅の持ち方別に所得水準がわかる年収別世帯数データはこちら
 
【駅圏域ごとの学校区別所得水準】 表(5)−1

 
また、この所得水準で学校区を色分けしてみました。所得水準が高ければ色が赤く、低ければ色が青くなっています。
◎マップ分析には、マンション需要分析ツールもしくはマンション需給分析ツールが便利です。

 
【学校区内所得水準(赤羽駅〜田端駅)】 マップ(5)−1

 
【学校区内所得水準(田端駅〜秋葉原駅)】 マップ(5)−2

 
【学校区内所得水準(秋葉原駅〜浜松町駅)】 マップ(5)−3

 
【学校区内所得水準(浜松町駅〜品川駅)】 マップ(5)−4

 
【学校区内所得水準(大井町駅〜大森駅)】 マップ(5)−5

 

→5.需要構造をみる

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