不動産版 第6回「商業力と消費性向をみる」

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 第6回のコラムは、これまでの住宅市場の分析とは多少方向性が異なり、経済情勢(主に商業力)を分析します。とはいえ、住宅市場に与える商業力の影響は非常に大きいので、しっかりとした分析が必要です(商業がすたれている地域に人が集まってくるとは考えにくいからです)。ここでは、商業力を分析するために、昼間人口や商業統計、家計調査をベースにした消費支出推計といった統計調査を活用しています。
 
(1)昼間人口の分析
昼間人口は、昼間その地域にどれだけの人口がいるか集計したものですが、事業所と学生数が対象になっており、「そこに買い物に来た客数」を示しているものではありません。しかし、昼間人口と小売店の店舗数をみれば、およそその地域の賑わい度を想定することができると考えられます。以下のグラフは、駅の乗降者数と昼間人口を男女別に集計したものですが、これを見ると、次のようなことがわかります。

◎昼間人口に関するより詳しい情報はこちらを参照してください。
◎駅乗降者数に関するより詳しい情報はこちらを参照してください。


※昼夜間人口の比較グラフは、最も昼間人口比率が低い東十条駅に合わせて補助線を引いている。

・昼間人口では、総じて男性の方が多いがこの傾向は都心部でより強くなっている(→グラフ(1)−1)。
・以下の駅では、乗降者数と昼間人口の差が大きい(→グラフ(1)−1)
 昼間人口は多いが乗降者数は少ない:神田駅、秋葉原駅、御徒町駅
 乗降者数は多いが昼間人口は少ない:品川駅、蒲田駅、上野駅、日暮里駅、西日暮里駅
・昼夜間人口を比較してみると、都心部に近づくにしたがって昼間人口の比率が高くなる。特に、神田駅、東京駅、有楽町駅、新橋駅では、昼夜間人口比が4000%を超える(→グラフ(1)−2)
 

【駅圏域ごとの乗降者数と男女別昼間人口】グラフ(1)−1


 
【駅圏域ごとの昼夜間人口比】グラフ(1)−2


 
 
(2)小売店の商業力分析
商業統計を使って、地域の業態別商店数や商品販売額を集計してみました。商業統計は、卸売・小売業を対象として、商店の分布状況、販売活動を把握し、さらに、業種別、規模別、地域別などに区分することで商業の実態を明らかにすることを目的として調査されています。この調査を活用することで、以下のようなことがわかります。
◎商業統計に関するより詳しい情報はこちらを参照してください


※最寄り品業種と買回り品業種
・最寄り品業種とは、日常よく家庭で食べたり使ったりする食料品や雑貨品をいい、比較的近くの店で購入するもので、以下の産業分類が該当。
各種食料品小売業  菓子・パン小売業
酒小売業 米穀類小売業
食肉小売業 その他の飲食料品小売業 
鮮魚小売業 医薬品・化粧品小売業
野菜・果実小売業  


・買回り品業種とは、買い物をする場合、比較的遠くまで出かけて行って品質や価格の良し悪しを見回って購入するもので、以下の産業分類が該当。
呉服・服地・寝具小売業 その他のじゅう器小売業
男子服小売業 農耕用品小売業
婦人・子供服小売業 書籍・文房具小売業
靴・履物小売業 スポーツ用品・がん具・娯楽用品・楽器小売業
その他の織物・衣服・身の回り品小売業 写真機・写真材料小売業 
自転車小売業 時計・眼鏡・光学機械小売業
家具・建具・畳小売業 他に分類されない小売業
機械器具小売業  
※集計されている項目のうち、「総合スーパー」および「専門スーパー」とは、次の内容で定義されている。
・総合スーパー - セルフ販売
産業分類「551 百貨店、総合スーパー」に格付けされた事業所で、「551百貨店、総合スーパー」とは、衣、食、住にわたる各種商品を小売し、そのいずれも小売販売額の10%以上70%未満の範囲内にある事業所で、従業者が50人以上の事業所をいう。
・専門スーパー - セルフ販売、売り場面積250平方メートル以上
衣料品スーパー - 衣料品が70%以上 のスーパー
食料品スーパー - 食料品が70%以上 のスーパー
住関連スーパー - 住関連が70%以上 のスーパー

※地域内の事業所数が少ないため個々の事業所を特定できてしまう場合、事業所数と従業者数以外の数字が秘匿されている場合があります。

※小売店年間商品販売額と最寄り・買回り業種の商店数構成比グラフおよび小売店業態別構成比グラフは、最も比率が低い駅に合わせて補助線を引いている(例.最寄り・買回り業種の商店数構成比グラフでは、有楽町駅の最寄り品業種商店数比率に合わせて補助線を引いている。また、小売店業態別構成比グラフは、百貨店と総合スーパー店数が少ないため、百貨店・総合スーパー・専門スーパーの合計店数の構成比率が最も低い駅に合わせている)。
 

・商業力という視点から大きく分けてみると、商業集積が大きい上野駅、御徒町駅、秋葉原駅、神田駅、東京駅、有楽町駅、新橋駅と商業集積が小さいその他の地域に分類できる。

・第4回の「地ぐらいをみる」で集計した駅圏域内商業系用途地域割合に対する小売店年間商品販売額をみてみると、おおよそ両者の関連性はあるが、都心部ほど商業地が有効活用されていると考えられる(→グラフ(2)−1)。

・最寄り品業種と買回り品業種の商店数を比較してみると、都心部ほど買回り品の商店が多いことがわかる。また、東京駅は商店数に対して年間販売額が大きく、1店舗あたりの売上が大きい地域と考えられる(→グラフ(2)−2、グラフ(2)−3)。

・業態別の商店数をみてみると、商業集積が大きい駅では百貨店が出店していることがわかる。総合スーパーは大規模な売場面積を必要とするため、地価の高い都心部を避け、郊外部で出店しているものと考えられる。また、東京駅、有楽町駅、新橋駅といった都心部でもドラッグストアの割合が比較的高くなっている(→グラフ(2)−4)。

・飲食店は、商業集積が大きい上野駅、御徒町駅、秋葉原駅、神田駅、東京駅、有楽町駅、新橋駅に多いが、特に新橋駅と有楽町駅で多く出店されている(→グラフ(2)−5)。
 
【駅圏域ごとの商業系用途地域割合と小売店年間商品販売額】グラフ(2)−1


  
【駅圏域ごとの最寄り品と買回り品の商店数比較】グラフ(2)−2


 
【駅圏域ごとの小売年間販売額と最寄り・買回り業種の商店数構成比】グラフ(2)−3

 
【駅圏域ごとの小売店業態別商店数構成比】グラフ(2)−4


 
【駅圏域ごとの飲食店数】グラフ(2)−5


 
(3)世帯の購買力分析
世帯の購買力を測る指標として家計調査があります。家計調査は世帯がどのようなものにいくら支出し、収入、貯蓄・負債、世帯人員、職業などの違いによって、その支出の仕方がどう異なっているかなどを明らかにするものです。その家計調査を基礎データとして推計した品目別の消費支出を、駅圏域ごとに集計してみました。これを見ると、次のことがわかります。
◎消費支出に関するより詳しい情報はこちらを参照してください。

※消費支出総額と消費構成比グラフは、最も構成比率が低い駅に合わせて補助線を引いている(例.飲食料品消費額の構成比が最も低い西日暮里駅と大井町駅の構成比率で補助線を引いている)。

・駅圏域内の消費支出総額は、都心部よりも郊外部の方が大きい(→グラフ(3)−1)。

・ただし、消費支出総額は圏域内世帯の合計値であるため、世帯数で除することで1世帯あたりの平均消費支出額を算出し、これに所得水準を重ねてみると、両者の関連性がみてとれる(→グラフ(3)−2)。

・主要な品目(飲食料品、外食、洋服・履物、家庭用耐久財)の消費割合は、各駅で明確な特性はみられなかった(→グラフ(3)−3)。

・小売業販売額と消費支出総額を比較することで地域の消費バランスを分析してみると、特に上野駅から新橋駅の都心部において消費の流入が飛びぬけている。一方、北部の東十条駅から日暮里駅では消費が流出しており、他地域の商業力に吸収されていると考えられる(→グラフ(3)−4)。
なお、商業統計では小売業販売額の単位を万円で、消費支出では消費額の単位を千円で集計しているため、小売業販売額を10倍し、千円単位に統一した上でグラフにした。

 
【駅圏域ごとの消費支出総額】グラフ(3)−1


 
【駅圏域ごとの世帯あたり平均年収と消費支出】グラフ(3)−2


 
【駅圏域ごとの消費支出総額と消費構成比】グラフ(3)−3


 
【小売業年間販売額と消費支出総額の比較(単位:千円)】グラフ(3)−4

 
それでは、京浜東北線の各駅圏域について、小売業販売額と消費支出総額を比較した消費バランスを地図上で色分けしてみます。圏域の色が緑になると消費の流入超過(小売業販売額が消費額を上回る)を、色が赤くなると流出超過(消費額が小売業販売額を上回る)を、色が黄色くなるとバランスが取れていることを表します。地図上で見てみると、都心部の商業吸引力の強さがはっきりとわかります。
◎マップ分析には、マンション需要分析ツールマンション需給分析ツールもしくはエリアマーケティングツールが便利です。
 
【消費バランス(京浜東北線沿線)】 マップ(3)−1

 
【消費バランス(赤羽駅〜田端駅)】 マップ(3)−2

 
【消費バランス(西日暮里駅〜秋葉原駅)】 マップ(3)−3

 
【消費バランス(神田駅〜浜松町駅)】 マップ(3)−4

 
【消費バランス(田町駅〜品川駅)】 マップ(3)−5

 
【消費バランス(大井町駅、大森駅)】 マップ(3)−6

 

→7.需給バランスをみる

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